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専守防衛と抑止力 - フセインの大量破壊兵器、日本の巡航ミサイル

防衛相 長距離巡航ミサイル導入を発表 「専守防衛に反せず」 | NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171208/k10011251061000.html
を聞いて、フセイン政権率いるイラクの末路を思い出した。
イラク武装解除問題 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF%E6%AD%A6%E8%A3%85%E8%A7%A3%E9%99%A4%E5%95%8F%E9%A1%8C

現在、北朝鮮弾道ミサイルの性能は、日本の保有するミサイル防衛システムの能力を越えつつある。
早晩、敵基地攻撃しか北朝鮮弾道ミサイルを防ぐ手段はなくなるだろう。
同様に、湾岸戦争終結当時のイラクもまた、再度のアメリカの侵攻を防ぐ手段は大量破壊兵器以外になかった。
別にイラクでなくても、世界No.2の大国である旧ソ連ですら、順位を付ける事を許されない唯一の超大国アメリカの侵攻を防ぐ方法として、大量破壊兵器である核兵器保有を選択している。
しかも、例え大量破壊兵器を使ったとしても、アメリカへの先制攻撃はイラクにとって自殺行為でしかない。
核兵器保有量だけでなく通常兵器保有量もNo.2であるソ連ですら、「核の冬」による全人類無理心中を恐れ、アメリカへの先制攻撃を避けてきたのだ。
フセイン政権の大量破壊兵器は、アメリカに対して「専守防衛」の要件を満たしていると、私は感じる。

さて、そのフセイン政権がどうなったかは、ご存知の通り。
イラク大量破壊兵器が防衛目的でしか使われないだなんて、敵国アメリカは認めなかった。
アメリカから見ればイラクは敵国であり、敵国の言うことなんて信じられないに決まってる。
そして、大量破壊兵器が使われる前に、フセイン政権を地上から消した。
大量破壊兵器なんて、実は最初から無かったのに。
フセイン政権が戦争を吹っかけられた原因は結局の所、実在する大量破壊兵器ではなく、「大量破壊兵器が実在して、フセインが先制攻撃する恐れ」という「敵国の恐怖」だったのだ。
そして「防衛目的でしか使えないよ」という言葉は、敵国には決して届かない。
日本の巡航ミサイルも同様だろう。
専守防衛目的でしか使わないよ」という言葉は、日本の同盟国には届いても、日本の敵国には決して届かない。
届くのは、巡航ミサイルの射程という、敵国を先制攻撃に追い立てる恐怖だけだ。

専守防衛」とは、侵略しないなら酷い目に遭わずに済む、と敵を安心させる戦略だ。
これは、抑止力に於けるアメとムチの「アメ」にあたる。
侵略したら酷い目に遭うかも、と敵を恐怖させるのが、抑止力の「ムチ」だ。
侵略した場合としない場合のリスクの差こそ、抑止力の要だ。
逆に言えば、「侵略しなくても、安心できない」と敵に思わせるのは、「侵略しても、リスクはない」と思わせるのと同様に、抑止力の低下となる。
リスクの差が縮まってしまうからだ。

フセイン政権はアメリカに安心を与えることができなかったから、地上から消えた。
敵国に対して日本は今、恐怖を与えることのみに執心して、安心を与える事を怠っていないだろうか?
いや、怠っていると私は感じる。

-- ネタ元 --
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