一人一党党

一人一人の、一人一人による、一人一人のための政治制度を!

「宝くじ」こそ、白票やドンキーボートの防止策である

論客コミュニティ
http://www.yamcha.jp/ymc/DSC_sure.html?bbsid=10&sureid=32&l=11
での書き込みの焼き直し。

近年の各種選挙の投票率低下を受けて
投票率が低下しているから、棄権に罰金を課す義務投票制を!」
という意見を見かける頻度が多くなってきた。
当然、それに対する反論もある。
その中で最も強力なものが、義務投票制を導入しているオーストラリアの例だ。

多くの国々と同様に、彼の国の投票用紙には立候補者名が最初から印刷してある。
それらの立候補者名のうち、支持する候補に目印を記入する仕組みだ。
ただし他の国々と大きく異なり支持する候補ではなく、候補の優先順位をオーストラリアでは記入しなければならない。
支持する候補が落選した場合に、その票が死票になってしまうのをある程度防ぐ選挙制度だからだ。
従って、この候補への優先順位は、各有権者の政治的意見によって決まるはず。
ところが、実際に開票された投票用紙を調べてみると、投票用紙に記された候補者名の順番と、候補への優先順位が一致している票が妙に多い。
まるで、お猿さんの様に何も考えず、投票用紙に載っている順番で優先順位を記入した有権者が沢山いる様に見える。
この現象は「ドンキーボート」と呼ばれる。

折角、罰金まで課して投票率を上げて増えた票は、候補者のことをロクに調べない有権者が、罰金回避のためだけに投じたものだったのだ。
Wikipediaの英語版をみると、「ドンキーボート」は優先順位を記入する投票制度でしか定義されていない。
しかし「ドンキーの様にロクに調べもしない有権者の票」は、義務投票制を用いる他の国々でも起きているだろう。
優先順位を記入する複雑な方式では、猿の仕業と真面目な投票とを区別し易かったに過ぎない。
白票・無効票・棄権と同様に、「猿の投票」には投票者の意志が込められていない。
民意の込められた価値ある一票は、義務投票制では増えなかったのだ。

詳しい説明は
投票のパラドックス、あるいはスイスと生きた豚 - P.E.S.
http://okemos.hatenablog.com/entry/20081207/1228611057
に譲るが、一票の持つ選挙結果への影響力から、個々の有権者の得られる価値は極めて少ない。
「投票は権利」とよく言われるが、その権利の重さは、ボランティアをする権利と大して変わらない。
だから、志願兵の義務化(徴兵制と呼ばれるが)と同様に、コストの支払いを強制する発想は当然の帰結だ。
コストを払っていることを、確認していればの話だが…。

一票に民意を込めるのに有権者が払わねばならないコストを以下の様に分けてみよう。
(a)候補者・選挙情勢を調査して、その有権者自身に最適な投票を求めること
(b)投票所へ足を運ぶこと
(c)投票用紙に記入して、有効票を作成すること
義務投票制が有権者に強制するものは、「(b)投票所へ足を運ぶこと」だけだ。
「(a)候補者・選挙情勢を調査…」は確認していない。
だから猿のような投票を許してしまう。

「(a)候補者・選挙情勢を調査して…」の確認は、一筋縄ではいかない。
少なくとも、ペーパーテストで確認できないのは、政治分野での言葉の使い方をみれば分かる。
例えば憲法9条2項の「陸海空その他の戦力」。
自衛隊は「陸海空その他の戦力」に該当しないのが通説なのだ。
恐らく、朝鮮戦争時代のまま時が止まった「朝鮮民主主義人民共和国」の骨董品は、「…の戦力」に該当するのだろう。
いつ侵略してくるか分からないテロ国家が保有しているという理由だけで…。

そこで私が提案するのは、選挙結果によって賞金が決まる「宝くじ」を投票者にプレゼントすることだ。

現在の日本の選挙制度の場合、具体的には以下の手順となる。
(1)当該選挙区の有権者全員から一律で、「義務投票違反金」を徴収する。
(2)有権者のうち投票を済ませた者に、未記入の「宝くじ参加権・参加用紙」を一人一枚配布する。
(3)自分の選挙区の候補者を2人選んで宝くじ参加用紙に記入し、有権者は宝くじに参加する。
(4)選挙での投票終了後、「最下位当選者」「次点落選者」を選管は確定させる。
(5)(3)で記入した候補者2人が「最下位当選者」「次点落選者」の2人と一致している宝くじ参加者に、(1)で集めた「違反金」を等分して配分する。

幸か不幸か
ギバード・サタスウェイトの定理 - 英語版ウィキペディア
http://en.wikipedia.org/wiki/Gibbard–Satterthwaite_theorem
により、全てのマトモな投票制度は戦略投票を避けることができない。
戦略投票を行うには選挙結果の予測が必要なので、「(a)…その有権者自身に最適な投票を求める」の義務を果たそうとする投票者なら必ず、戦略投票を行うための選挙予測をしていることになる。
逆に言えば、戦略投票に役立つ選挙予測をしていれば、「(a)候補者・選挙情勢を調査して…」のコストを払っている有権者だというわけだ。
投票済みの有権者しか宝くじ参加権は得られないので、(b)のコストを払っている事も確認済。
これらの有権者に限定して違反金を(割増して)払い戻すことで、(a)(b)のコストを払う動機を有権者に植え付けることが出来る。

ちなみに、宝くじ参加者に予想させる内容は、以下の様にして求めた。

一票の影響力は非常に少ない以上、実現性の高い順で上位二つの選挙結果のみが、戦略投票では重要になる。
実現性最上位は、開票で確定した「実際の選挙結果」だ。
そして、実現性第二位を得るには、実際の開票結果から何票の票が変更されたら、選挙結果が変わるか考えればいい。
実際の選挙結果を変えるために変更する票が最も少ないのが、実現性第二位の選挙結果だ。
効果的な投票ならば、この二つの選挙結果の実現性の操作を最優先にしているはずだ。

現在の日本の選挙制度である
単記非移譲式投票 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%98%E8%A8%98%E9%9D%9E%E7%A7%BB%E8%AD%B2%E5%BC%8F%E6%8A%95%E7%A5%A8
での実現性第二位の選挙結果は、最上位の選挙結果と比較すると「最下位当選者」の代わりに「次点落選者」が当選するものだ。
従って、単記非移譲式投票で戦略投票を正しく行っている有権者ならば必ず、この二人の候補者を当てられることになる。
他の「最下位以外の当選者」「次点より順位の低い落選者」については、知っていても単記非移譲式投票では実現性上位二位の選挙結果に差を付けるのに役立たない。
宝くじ参加用紙の記入コストも考えると、これらの候補を宝くじ参加者に予測させるのは割に合わない。

他の投票制度の場合は、戦略投票が変わってくるので、宝くじ参加者に予想させる内容もそれに応じたものにしなければならない。

残るコストは「(c)投票用紙に記入して、有効票を作成すること」だけだ。
秘密投票の原則の下では他人が確認する事はできない以上、このコストの強制は無理かもしれない。